来年度の税制改正にむけて、いよいよ本格的な議論が始まりました。長く働くほど優遇される退職金への課税のあり方もテーマの一つになっています。
■「退職金の課税」見直しを議論 増税の可能性も?
上村彩子キャスター:
退職金にかかる税金の見直しについて議論がされていますが、現在、どのような仕組みになっているのか見ていきましょう。
勤続40年の人が退職金2500万円を一括で受け取る場合、勤続20年までは1年当たり40万円の控除で非課税となります。しかしその後、勤続20年を超えると1年当たり70万円の控除と控除額が引き上がります。
では、どこに税金がかかってくるのかというと、この控除を除いた半分が非課税となるので、そのまた半分が課税分ということになります。(国税庁ホームページ参照 青山学院大学 須田敏子教授によると)
一つの企業に長く勤めれば長く勤めるほど、控除が増えてくるという仕組みです。終身雇用を前提とした仕組みなので、この時代に合っていないのではないかという声が上がっているわけです。
SNSでは…
「“退職金増税”は間違っていると思う」
「退職金を老後のあてにしてて、増税されたらライフプランが崩れる」
と、自分の控除額が減ってしまうのではないかと考えている人はこのような意見です。
一方で…
「転職があったりで退職金と無縁の人も多い。制度自体を見直してほしい」
という声もありました。
井上貴博キャスター:
最近のニュースでは103万円の壁とか、昭和時代に作られた制度がずっと続いてることが多すぎて、退職金も個人的に感じるのは、転職がこれだけ当たり前の世の中になっているのに、終身雇用制度時代の制度がずっと続いてるのが、そもそも何をやってるんだろう、とすら思えます。
元競泳日本代表 松田丈志さん:
会社に所属するというよりは、何の役割を持ってその仕事をしているのか。その役割に対する報酬をもらうというジョブ型の働き方に変えていった方が良いのは間違いないと思います。
日本でも転職が増えてきて、転職した方が給与が上がっていく流れができているので、その流れはいい流れだと思いますし、その流れを受けて、退職金制度はどうなっていくのかという、これからなのかなという感じがしますね。
■そもそも「退職金」とは? “退職一時金”“退職年金”違いは?
上村キャスター:
退職金の多くは「退職一時金」を指します。一時金として、一度に支給されるものです。
そして他にも「退職年金」というものがあり、“年金形式”で定期的・継続的に支給されるものです。
退職金の相場は大企業の大卒の平均2230万4000円。中小企業だと、大卒の水準額で1091万8000円となっています。(※満勤勤続の場合)
(厚労省 令和3年度賃金事情等総合調査)
(東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情 令和4年版」)
■退職金のルーツは?「高度経済成長期」がカギ?
では、少し脱線しますが退職金のルーツはどんなところにあるのでしょうか?
退職金制度に詳しい青山学院大学の須田敏子教授によると、江戸時代にさかのぼるといいます。
「のれん分け」という言葉がありますが、長年仕えた奉公人が独立する際に「のれん」を送るなど支援しました。この時はお金ではなくて、物で支援していました。
では、退職金はどうなのでしょうか?それは高度経済成長期なのではないかということです。
高度経済成長期に物価がどんどん上がっても賃金を上げられず、退職金として後で支払うということで、従業員に納得してもらったという形だそうです。
老後の保障としても良いということで、どんどん導入する企業が増えていったということです。
■退職金の使い方は?「日常生活費への充当」「住宅ローンの返済」
退職金を導入している企業はどれぐらいあるのでしょうか?
30人以上を雇用する民間企業の74.9%に上るということで結構多いですよね。(厚労省「令和5年就労条件総合調査」より)
では、退職金の使い道はどうでしょうか?
1位 預貯金(59.3%)
2位 日常生活費への充当(25.6%)
3位 旅行等の趣味(21.7%)
4位 住宅ローンの返済(20.8%)
5位 金融商品の購入(20.3%)
(投資信託協会 2022年3月発表 調査対象:60歳以上の男女)
老後に退職金を使いたいという思いもこの数字からは読み取れます。
■退職金“ポイント制”導入する企業も
退職金制度に詳しい須田教授は「一つの職場で長く働けば、多くの退職金をもらえるという仕組みは今の時代にそぐわない」といいます。今は転職してキャリアアップの時代です。
企業によっては退職金“ポイント制”というものを導入しているところがあります。
在職中の職務能力などに基づきポイントを付与するので、勤続年数ではなく、しっかりと個人の能力を見てくれるというものです。
他にも須田教授は「退職金の課税がすぐに変わることはないと思うが、段階的に変わる可能性はある」ということでした。まずは企業側が率先して、退職金制度を見…(https://newsdig.tbs.co.jp/list/article?id=jnn-20241126-6204827)
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